■長引く不振からなかなか脱却できないマクドナルド
これまでデフレ経済による消費者の節約志向から市場の縮小に悩まされてきた外食産業にもアベノミクス効果で薄日が差してきました。
ところが、同じ外食産業でもファストフード業界は不振にあえいでいます。
それは、“デフレの勝ち組”としてこれまで快進撃を続けてきたマクドナルドにとっても例外ではありません。2012年12月期の決算で、既存店の売上高が9期振りに前年実績を下回ると、2013年に入っても回復の兆しが見えず、1月、2月などはそれぞれ前年同月比マイナス17%、マイナス12%と大幅な減少を記録しました。
2004年に原田泳幸氏が代表に就任して以来、さまざまな経営改革を断行し、業界で“独り勝ち”といっても過言ではないほどの快進撃を続けてきたマクドナルドですが、最近ではこれまで抜群の効果を発揮してきた“原田マジック”が全く効かなくなってきたのです。
たとえば、2013年の1月には昼食時間帯に『ENJOY! 60秒サービス』と称して、注文を受けてから60秒以内に商品を提供できなければハンバーガーの無料券を、そして60秒以内で提供できたとしてもコーヒーの無料券を進呈するという大規模なキャンペーンを展開しました。
また、続いて朝食需要を喚起しようと、『フリーマンデー』キャンペーンを展開。朝食時間帯に無料の商品を提供することで、これまで来店しなかった顧客を取り込むことに注力します。
ところが、結果は1月、2月それぞれ既存店の顧客数がマイナス8%、マイナス11%と全く振るわなかったのです。
■価値を重視したマーケティングに方向転換を図ったマクドナルド
原田社長は3月27日の日本経済新聞社の取材に答えて、最近のマーケティング戦略の失敗を「消費者の変化に気付くのに遅れた」と反省の弁を述べています。
それほど最近の消費者のマインドは短期間で急激な変化を繰り返し、百戦錬磨のマーケッターでさえ、その心を読み解くことは難しい環境になっているのでしょう。
そこで、マクドナルドはこのような長引く不振から脱却するべく、大規模な価格改定で業績回復を実現するという大きな決断を下します。
2013年5月7日から、主力商品であるハンバーガーを100円から120円に、チーズバーガーを120円から150円に、そしてビッグマックを290円〜320円から330円〜360円に引き上げる一方で、ポテトのSサイズは190円〜230円だったものを150円に値下げするなど、多くの商品の価格改定を行うことを発表したのです。
加えてチーズや野菜を少なめにした190円のダブルチーズバーガー『マックダブル』を目玉に“Value Picks”という新たな価値の高い商品群を投入することにより、顧客が「ハンバーガーよりチーズバーガー」「チーズバーガーよりマックダブル」と、次の高額商品までの段差を縮めて、より高い商品を注文する細やかなアップセリングの仕掛けを講じます。
今回の価格改定は、値上げと値下げをミックスしてトータルでは0.3%というわずかな値上げとなりますが、特徴としては、これまでの無料や低価格を武器にしたマーケティングから、より価値を重視した戦略に方向転換を図ったといえるでしょう。
■マクドナルドが主力商品を20%値上げしたワケ
日銀がデフレ脱却に向けて2年以内に2%の物価上昇目標を掲げていますが、今回のマクドナルドの主力商品の値上げは20%にも及びます。まだまだデフレ経済から脱却できていない日本経済を考えれば、異例のことといえるでしょう。
それでは、マクドナルドはどのような確証があって、このような思い切った価格戦略に打って出たのでしょうか?
鍵になるポイントは2つあります。
□1. マーケティングとはサイエンスである
一つ目は『マーケティングとはサイエンスである』ということです。
もちろん、マーケティングには、人々を魅了する“職人芸”のようなアートの部分もありますが、『同じような条件下で、同じマーケティング戦略を実行すれば、同じような結果を導くことができる』という再現性を備えた科学的な側面も兼ね備えています。
マクドナルドのような大企業では、大規模なマーケティング戦略を実行する際には、極力失敗を避けるために小規模な実験を行ってから結果を検証し、効果を確信した段階で全国規模に展開していくことが一般的です。
今回の価格改定も、1月から福岡県などの数店舗で実証実験を行っています。
実験で、主力商品の値上げに加えてより価値の高い“Value Picks”の商品を投入したところ、集客が順調に推移し、収益も拡大したという仮説通りの検証データが得られた結果、確信を持って全国展開に踏み切ったといえるでしょう。
□2. 固定客の価格の弾力性は小さい
二つ目のポイントは『固定客の価格の弾力性は小さい』ということです。
価格の弾力性とは、価格を変化させたときに需要が変化する割合で、たとえば価格を20%変化させたときに、需要が2%変化すれば、価格の弾力性は0.1になります。
これは、たとえば価格を100円から120円に値上げしたときに、顧客数が値上げ前の100人から98人に減ったということを表します。
同じように価格を10%変化させたときに、需要が50%変化すれば価格の弾力性は5ということになります。これは、たとえば価格を100円から90円に値下げしたときに、顧客数がそれまで100人だったものが150人に増えたということなのです。
このように、価格を変化させても需要にあまり影響のない場合は『価格の弾力性が小さい』ということになりますし、価格をわずかに変化させただけでも需要に大きな変化が表れる場合は『価格の弾力性が大きい』ということになります。
一般的に主食やガソリンなど生活必需品は価格の弾力性が小さく、宝飾品などの嗜好品は価格の弾力性が大きいとされています。
価格戦略を検討する際、価格の弾力性が小さい場合は、価格の変動が需要に大きな影響を与えないために、あまり気を使う必要はないかもしれませんが、価格の弾力性が大きい商品は、わずかな価格の変化が需要に大きな変化をもたらすために、細心の注意を払って決定しなければいけません。
マクドナルドでは、これまでの経験からハンバーガーやチーズバーガー、ビッグマックなどは固定客が主な購入層であり、価格の弾力性が小さく、多少価格を変動させても購買頻度にあまり変化がないという結論に至ったというわけです。
■主力商品の大幅値上げでも顧客離れを食い止めるポイントとは?
はたして、マクドナルドが小規模で実験を続けてきたマーケティング戦略は、全国レベルでも通用するのか? そして、今回の大幅な価格改定によって、思惑通りに業績回復につなげられるのか?
都心部では、同じハンバーガー業界だけでなく、牛丼などの他の外食企業、さらにコンビニエンスストアやスーパーなどハンバーガーに取って代わるものがいくらでもある状況の中で、“大義名分”なき主力商品の大幅値上げが消費者に受け入れられるかどうか、そして顧客に価格以上の価値を感じてもらえるかどうかがポイントになるでしょう。
2004年の就任から2011年までマクドナルドの快進撃の立役者となってきた原田社長ですが、今回の大規模な価格改定でその真価が問われることになりそうです。
(All About より)
喫茶店に行けば今日もまた〜♪ こんなおいら 今日はマクドナルドでおいしいバーガーとポテト 食べたいね・・・。
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